実は抗うつ剤が慢性痛に効くと言うのは、医療の世界では常識のようです。しかし、整形外科を受診した患者に抗うつ剤を服用する事の意義を説明する事の難しさが問題となっているようです。(
http://atoyofpsd.net/brain/brain_06.html)
以下(
http://www.hiranumaseikeigeka.jp/category/1170187.html)より抜粋。
慢性疼痛と抗うつ剤
慢性の疼痛には以前からうつ病の薬が効果を持っていることが知られています。
特に、三環系抗うつ薬といわれる第一世代の薬がいまでも痛みの緩和に使われているのです。多くの場合、長い期間にわたりつらい痛みが持続する患者様は、多かれ少なかれ精神的にストレスを受けており、うつ状態にあることが多いものです。だが抗うつ剤には薬本来の作用として疼痛を和らげる力があることがわかっています。脊髄後角への下降性の疼痛抑制作用といわれており有効に使えばそれなりの効果が期待できます。
ただ、患者様にしてみれば痛みをとってもらいたいと受診したのに抗うつ剤を出されて怒り出す方もいると聞きます。充分に説明して納得いただいた上で処方することが大切になる薬です。
さらに(
http://www.aichi-med-u.ac.jp/pain/miki.html)より抜粋。
しかし最近では下行性抑制系の異常が原因と考えられてきている。また下行性抑制系に重要な働きをするセロトニンが減少していることが報告され、セロトニンに代謝されるトリプトファン補充療法が線維筋痛症候群(≠MPS)の痛みを軽減することが報告され、また最近では下行性抑制系を賦活化するノイロトロピンが効果的という意見も出されている。
治療方法が無かった線維筋痛症候群の痛みに対しても有効な治療方法が見つかりつつある。
実際の治療としては、下降性抑制系を利用した治療である三環系坑うつ薬、SSRI、SNRIは多くの症例で使用されまた非常に効果的である。
下降性抑制系として、代表的なものは下図に表される「セロトニン作動神経」と「ノルアドレナリン作動神経」です。
痛覚信号が侵害受容器から脊髄に伝達される所で、これらのセロトニン、ノルアドレナリンと言った、神経伝達物質が、痛覚信号の伝達を阻害すると言う仕組みです。 下記参照URLに見られるように、脳内物質としての、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの欠乏がうつ病の原因である事はよく知られています(特にセロトニンが有名)が、これらの物質が、下降性抑制系に作用する事から、抗うつ剤が慢性痛に対して処方されていると言うわけです。
(
http://watchan.net/health/serotonin.html)
(
http://ja.wikipedia.org/wiki/うつ病)
(
http://www.depression-measures.com/)
ここで誤解して頂きたく無いのは、
慢性痛に対する抗うつ剤の処方は単なる痛み止めでは無い。と言う事です。
戦場で撃たれた兵士にモルヒネを投与すると言うのは、単なる痛み止めです。なぜなら、それは明らかな急性痛であるためです。
しかし慢性痛の場合は、急性痛と異なり、侵害受容器だけの責任では無くなって来ているのです。
侵害受容器から脊髄を経て、脳へと至る、神経経路の過程で可塑的な変化が起こり、極端に言うと、触覚等を伝える感覚受容器(侵害受容器では無い)からの信号が、痛覚信号として処理されると言う事も起こりえます。(アロディニア)
つまり、
侵害受容器以外の部分に責任が有る場合、神経系に引き起こされた「負の可塑的変化」を「正の可塑的変化」に書き換えて行く必要が有ります。「痛みの悪循環」と考え方は同じです。痛みの悪循環が続く事によって、実際に組織損傷が引き起こされる場合も有るためです。
ただ、やはり薬と言うものには副作用と依存性が有る事も確かでしょう。自然な形で、下降性抑制系の働きを高める事が理想的であると言えるはずです。特に、セロトニンは食事、生活習慣、運動と言った中で求める事が出来ます。
セロトニンは脳内の松果体で、アミノ酸のトリプトファンが、視覚から入った光(太陽光等)を受けて、化学合成される神経伝達物質で、さらにセロトニンからメラトニンと言うホルモンが合成され、夜間に分泌されます。(
http://www.gussuri.net/002_2/ent184.html)
つまり、トリプトファンを含む食品を採り、太陽光を十分に浴びる事で、セロトニンの合成を促進する事が出来ると言うわけです。
(
http://bcaweb.bai.ne.jp/d-kiroku/rizumu.html)
(
http://blog.nikkansports.com/life/health/archives/2006/01/post_161.html)
(
http://blog.nikkansports.com/life/health/archives/2006/01/post_161.html)
さらに、一定のリズムで行なわれる運動がセロトニンの合成を促進する事も知られています。スポーツ選手がガムを噛むと落ち着くと言うのも、このためです。
(
http://physi1-05.med.toho-u.ac.jp/genki/new-top.html)
(
http://www.sponichi.co.jp/osaka/soci/kenko_dojo/yoga.html)
(
http://www.miyabi-c.co.jp/hidamari/data_pdf/2007_04/14_15p.htm)
なお、トリプトファンを多く含む食品としては、牛乳、チーズ、大豆、アーモンド、ひまわりの種、鶏肉、赤身魚、バナナ等が挙げられます。
(
http://ja.wikipedia.org/wiki/トリプトファン)
(
http://kenko.it-lab.com/info.php/110/)
(
http://www.gussuri.net/002_2/ent183.html)
さらに、太陽光に変わるものとして、人工の光を利用する、光線療法と言うものもあります。
慢性痛の中では神経系が可塑的な変化を起こしていますから、出来るだけ痛みの無い状態を作って、「負の可塑的変化」を「正の可塑的変化」に書き換えて行く事が大切になります。(
http://junk2004.exblog.jp/5191247/) (
http://sansetu.exblog.jp/5164440)
野球で悪いクセを直すためには良いクセを身体に覚え込ませて行く必要が有るのと同じ事です。始めは悪いクセが残っていますが(取り組みが正しければ)悪いクセは消す事が可能です。